自力救済について

やられても,やりかえすとまずい場合があります。権利を侵害された者が,裁判手続によらず,己の実力をもって権利の回復を果たすことを,自力救済と言い,わが国ではこれが禁止されています。

自力救済によって紛争の解決を行うことを認めると,用心棒を雇うなどの暴力が用いられたり,力こそ正義であると主張して,権利がないのに実力行使がなされることがあり,社会秩序の維持が難しくなります。私人の権利の実現は,裁判手続を通じて行う必要があり,自力救済によったことで,かえって被害者側が不法行為責任を問われてしまう可能性があります。

自力救済の例

  • 貸した金を返してもらえないため,暴力をふるって強奪した
  • 売掛金を支払わないため,社長を監禁して念書を書かせた
  • ひったくりにあった数日後,自分のかばんを持ち歩いている人を偶然見かけたため,奪い返した
  • 借主が家賃を滞納しているため,無断で鍵を交換して,部屋に入れないようにした
  • 盗まれた自転車が他人の庭先に駐輪してあったため,黙って侵入して取り返した
  • 万引きの常習犯の顔写真を,店舗の入口に掲示した

自力救済を禁止する旨の判例

私力の行使は,原則として法の禁止するところであるが,法律に定める手続によったのでは,権利に対する違法な侵害に対抗して現状を維持することが不可能又は著しく困難であると認められる緊急やむを得ない特別の事情が存する場合においてのみ,その必要の限度を超えない範囲内で,例外的に許されるものと解する。
(最三小判昭和40年12月7日民集19巻9号2101頁)

自力救済は原則違法であり,「緊急やむを得ない特別の事情」がある場合にのみ,例外的に許容されるとしています。家賃を滞納したまま夜逃げをした賃借人の残していった家財を,家主が勝手に処分した事例では,民事上の責任だけではなく,住居侵入や窃盗などの刑事責任にも問われてしまう可能性がありますので,注意が必要です。

適切な手段で解決を

これまで見てきたとおり,自分に権利があったとしても,この使い方を誤ると,相手方から損害賠償請求をされたり,刑事事件にもなりかねません。適切な手段で解決することが望まれます。

まずは,約束を守るように書面で通知をするほか,約束が守られないようであれば,契約を解除する等,現在よりも被害が拡大しないようにしましょう。本人同士のやりとりではうまく進まないときには,弁護士や司法書士等の専門家を利用することを検討しましょう。

弁護士や司法書士であれば,相手方の調査や証拠の整理,文書の作成にも長けております。また,代理人となって相手方と交渉することができます。任意の交渉に相手が応じない場合には,速やかに裁判手続に移行することができます。ビジネスや日常のトラブルについては,手遅れになる前に,お早めに相談いただくことが大切です。

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