減災と狭あい道路の解消

本日,ウインクあいちにて開催されました,愛知県土地家屋調査士会主催の第19回あいち境界シンポジウムに参加いたしました。

「減災と狭あい道路の解消について」をテーマに,基調講演とパネルディスカッションがありました。

狭あい道路とは

狭あい道路(狭隘道路)とは,道路幅が4メートルに満たない狭い道路のことをいいます。

狭あい道路は,災害時には,消防車や救急車が進入することが難しく,火災発生時に消火活動が遅れて延焼拡大する,救急活動時に傷病者の搬送に時間がかかる等,生命・身体にかかわる大きな問題となっております。

また,このような地域では,家屋が密集していることが多く,日当たりや風通しがよくないほか,排水機能が弱くなる等の生活環境の悪化の原因となります。

事務所の周辺の狭あい道路

当事務所は,名古屋市港区の最西端にあり,500メートルも歩きますと海部郡蟹江町との市境に到達します。

蟹江川の東側の堤防に沿って南北にわたり,名古屋市港区畑中海部郡蟹江町舟入という地域があり,そこには古くから建ち並ぶ家屋が密集しております。


この辺りには,空き家や朽廃建物も散在しています。地域内でも比較的広いところでは,建替え等をして整備をしているような状況もありますが,大半は,安全とはいえない状況であります。


こちらの写真は,正面が川の堤防にあたるのですが,そこから狭く曲がった斜面の道路が続いております。車両は進入できません。

家が建っているのは,河川の水面よりも低く,堤防が決壊してしまえば,水没してしまう可能性が高い地域です。にもかかわらず,住宅が密集しており,災害時には,避難の遅れが心配される地域であります。

減災と狭あい道路の解消

名古屋大学の福和伸夫教授の基調講演の冒頭,過去の大災害を振り返り,亥年はこの当たり年であることが紹介されました。

富士山噴火,関東大震災,伊勢湾台風,三宅島噴火,日本海中部地震,阪神淡路大震災,新潟県中越地震など,いずれも亥年に発生しております。

これを直ちになにかに結びつけるのはただのオカルトになってしまいますが,ご当地におきましても,南海トラフ巨大地震がいつかはやってくると言われて久しいものです。予想どおりの規模で発生してしまった場合には,救急車や消防車,給水車等による公的な救済は,とても追いつかないため,自力で生き残る準備が必要であると説かれました。

近年多発しております地震や風水害により,道路,橋梁,空港や電力等のわが国のインフラが,いかにも脆弱であることがわかっております。地続きで接する国がありませんので,外国からの援助も期待することはできません。

地震保険を見ますと,南海トラフ巨大地震で予想される保険金支払額は,22兆円とされています。これに対して,損保大手3社の総資産額は56兆円しかありません。しかもそのほとんどは,株式や不動産であって,現金ではありませんので,公金を注入するとしても,到底足りません。忘れかけた頃にわずかな金額が支払われるに過ぎないと言われております。それゆえ,地震保険で生活再建を見通すことは,現実的ではありません。

狭あい道路の平時における問題

狭あい道路の日常的な問題として,道幅が狭いことにより,見通しが悪く,歩行者と車両が接触する等の交通事故の危険性が高まります。また,福祉車両や宅配車両が家の前まで来ることができないため,不便を強いられることとなります。

また,住宅の建て替え工事をするにも,重機が入れないことやセットバックに伴う擁壁工事のやり直し等により,建築代金が高くなるほか,自宅敷地内まで乗用車を乗り入れることができないこともあります。

このような場合には,土地や建物が流通しにくくなり,転入者が増えない一方,住民の高齢化が進み,空き家の増加につながります。既存の不適格建築物や朽廃建物が散在する結果,住環境の安心・安全がおびやかされてしまいます。

狭あい道路が改善されない理由

  • 路地が好き
  • 界隈性や風情を大切にしたい
  • 文化的に町並みを残したい

意見がさまざまありますが,必ずしも合理的な考え方だけでは解決することが難しいようです。

飲み屋のある裏路地とか,風光明媚な町並みを保存することとは異なり,やはり住宅地においては狭あい道路を速やかに解消するべきと強調されました。

狭あい道路の解消のために

狭あい道路を解消するためには,終着点として,道路を拡幅することとなります。そのためには,セットバックや立ち退きをはじめとして,土地の所有者の協力を得られなければ,なにも始まりません。

自治体の中には,後退杭の設置と,後退用地をガーデニングや物置代わりに私用させないように積極的に呼びかけ,しつこく指導しているところもあるそうです。私有地とはいえ,道路として提供した以上は,好き勝手に使ってもらっては困るという姿勢で望む必要があるでしょう。

これも相続未登記の問題と重複するところがありますが,結局のところ,土地は誰のものかという長年の問題に行き着いてしまうと思います。個人の所有であっても,公共の利益のためにどこまで譲らなければならないのかということです。一方で,取得した土地を後から譲ってくださいと言われても,困りますし,正直なところあまりいい気分にはなりません。そのような意味でも,都市計画をしっかり作成して,明示しておくことが重要なことと考えます。

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