値上げをすると客が減るのは本当か?

値上げをすると客が減ってしまう。

高品質のものを,できるだけ低価格で提供することが,企業努力である。

よく聞こえてくる話ですが,これは真実なのでしょうか。常々,疑問に思っていることで,先日受講しました村松達夫先生のセミナーでも,この点について触れられて,勉強になりました。経営者としては,自社のサービスや商品を1円でも高く売りたいと考えるのは自然のことで,謙遜する必要もないと考えます。

消費者目線で,価格を下げる方向に進めますと,利益が薄くなり,結果として従業員の賃金も上がらない方向にはたらきますから,良いことは何もありません。1億総貧乏社会を目指したい一部界隈の方たちが,世の中をアジっているようにしか見えません。

最近,食品等を中心に,ステルス値上げということばが聞かれます。原材料価格や人件費の高騰により,従来の販売価格を維持することが困難であるが,値上げをせずに,内容量を減らすことで利潤を維持することを指しているものと思われます。

その場しのぎの対応ですね。

一時的に原価が上昇しているだけであれば,この方法でもかまわないと思いますが,長期的に改善する見込みがないのであれば,値上げをしなければ堪えられません。

そこで,冒頭の話ですが,値上げをすると,客が減るのは本当なのでしょうか。私の通っているラーメン店でも,次々と値上げをされております。しかし,私は通う回数を減らすこともありませんし,店の雰囲気にも特に変化は見られません。店を価格だけで選んでいないからです。

もう一歩踏み込んで,客が減っても,利益さえ出ていれば,企業としてはなにも問題がないと考えます。上場企業で株主対応をしていた経験からも,投資家がよく見ているのは,利益と将来性でした。

実例で検討してみます。客単価5万円,客ひとりあたりの経費が2万円の事業者の収益を示したものが次の表です。

表1では,客単価を20%上げて,客数を維持した場合には,利益は約33%増加することがわかります。仕事の中身を変えたわけでもなく,価格表を書き換えただけで,33%もの増益が実現できるのです。

実際には,値上げをすることで,ある程度は客が減ることも考えられます。

表2では,客単価を20%上げたところ,客数が20%減った場合を考えます。客数の減少をカバーするほど売上は伸びませんが,それでも利益は増えています。

薄利多売の方法が可能であるのは,大規模な事業者であるからです。司法書士のような労働集約型産業で,かつ零細事業者が同じことをやれば,忙しくて潰れるだけであります。旨味がなく,常に人手不足の状況に陥ります。

しかし,値上げをすることで,客数が減って労働時間が減少するほか,ハイエンドで良質な顧客に絞り込みをかけられ,手元に残る利益も増えるという良いこと尽くめの結果が待っています。

ただし,価格だけにこだわりたい,1円でも安いところに頼みたい。このようなニーズを否定するものではありません。そういった顧客は,それを受容していただける先生に依頼をしていただければいいのです。

さて,司法書士の世界では,業界の相場なるものに取り憑かれ,これから大きくはずれるような価格設定は,品位を害するとまで言われることもあります。正直な感想として,大きなお世話です。サービスのあり方や魅せ方を工夫し,依頼者が望んだ内容で提供できているのであれば,他人にとやかく言われるようなことではないからです。マーチに乗りたい人もいれば,レクサスに乗りたい人もいる。それだけのことだと思うのです。

誰もやっていないことをしたり,新しいサービスや価値を提供したりすれば,業界の相場など知ったことではありません。これからますますニーズが高まる相続,後見,信託といった分野では,顧客の特性に応じたカスタムメイドのサービスが提供できる分野であって,一律の報酬基準で捕捉することは困難であります。

値上げは悪いことではなく,質の高い商品・サービスを継続して提供していくためには,大切なことであるというお話でした。

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