相続は早い者勝ちに?

相続登記は、いつまでにやらなければならないのでしょうか。

よくお問い合わせいただきます。相続登記には、相続税の申告のように、法律で定められた期限はありません。

自宅を相続した場合には、そのまま住み続ける限りは、相続登記をしなくても問題がないと考えられている方が多いです。

令和1年7月1日に改正された相続法により、そのように安気に構えていてはならないことになりました。

自宅から追い出される

父母が父名義の自宅に住んでおり、父が亡くなりました。

母は、このまま住み続けるつもりで、相続の登記はしないまま、生活しておりました。

ある日、不動産業者から、自宅の共有持分を買い取るように請求してきましたが、何のことかわからず、母はあやしい業者であると考えて放置してしまいました。

すると、今度は裁判所から訴状が届きました。

裁判所からの呼び出しに対しても、母は身に覚えがなかったため、これもまた放置しました。

最後には、裁判所から強制執行され、自宅は売却されて、母の手元にはわずかな現金が残されたものの、自宅から追い出されてしまいました。

相当、端折って書いておりますが、相続の手続を後回しにした結果、起こる可能性があることです。

なぜ、そうなるのか

なぜ、このようなことになってしまったのでしょう。

相続登記は、多くの場合には、遺言書があるか、遺産分割協議を経てからするもので、知らない間に勝手に進められることはないと思われています。

しかし、法定相続分の割合での相続登記は、相続人のうち、ひとりからの登記申請でできてしまいます。

端的に申し上げて、身内の誰かが勝手にすることができてしまうのです。

つまり、上の事例では、子が単独で、法定相続分の割合である母子2分の1ずつとする相続登記をしています。

その後、子の持分2分の1だけを、買取業者に売却したことで、母と業者が2分の1の割合で共有している状態になっております。

業者は、自宅の共有者のひとりとして、母に対して共有状態を解消することを請求することができます。

具体的には、業者の共有持分を買い取ることを母に請求するか、母の共有持分を業者に売り渡すように請求することとなるでしょう。

これは、任意に共有持分の売買を持ちかけることもできるし、相手が応じない場合には、裁判の手続を利用して、共有物分割請求をすることとなります。

裁判の手続を利用した結果、裁判所が自宅を換価して、現金を分割するような判断をすれば、母は自宅を失います。

傾向と対策

家族の中に、お金に困っているような方がいる場合、相続の手続は速やかに進めるべきであると考えます。

共有持分だけを売買することはあまり考えられませんでしたが、最近では、共有持分の買取業者も増えてきているようで、インターネットの広告でもよく目にするようになりました。

たとえば、遺言書があっても、この方法で進められた場合には、負けてしまいます。

今年の相続法改正で、遺言書によって法定相続分よりも多くの財産を取得した場合であっても、登記をしなければ第三者に対抗できないこととなりました。

つまり、相続が早い者勝ちとなってしまっているのです。

この対策としては、いくつかあります。

まずは、相続が開始したら、速やかに遺産分割協議をして、相続登記をはじめとする相続の手続を進めることです。

自宅については夫婦間で生前贈与をしたり、死因贈与契約をしておき、確実に相手の名義になるように準備をする方法もあります。

贈与をした場合も、口頭でするだけでは足りず、登記をしなければなりません。

来年になれば、配偶者居住権という新しい権利が創設されますから、これを活用して、住むところを守ることができるようになります。

大切なことは、相続の手続を後回しにしないことです。

もっと大切なことは、相続の手続は、生前に元気なうちに準備をすることです。

ただ遺言書をつくるだけではなく、家族会議で考えを共有しておくことまでしておけば、もめごとは相当減らせると考えます。

そして、裁判所から文書が届いたときには、絶対に放置せず、速やかに弁護士に相談することです。

知らないうちにやられた、何もしていないのにやられた、というのは、通用しません。

40年ぶりの相続法改正ですが、争族の元になるポイントがたくさんあります。

生前対策がますます重要になっております。お早めにご相談いただきたいと思います。

投稿者プロフィール

司法書士野田啓紀
司法書士野田啓紀
遺言書、家族信託、成年後見制度などを活用した相続対策、認知症対策を専門とする司法書士です。相続登記や遺産承継業務のような死亡後の相続の事務手続だけではなく、生前での相続や事業承継への対応に、適切な助言をいたします。

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