おふたりさまの相続

子のいない夫婦、いわゆるおふたりさまの相続のご依頼です。

夫が亡くなったので、相続の手続をされたいとのことです。

依頼に来られた方は、相続人が自分ひとりしかいないと思い込んで、私の事務所を訪れました。

子のいない方が亡くなった場合、その相続人は、配偶者だけではありません。

まずは、亡くなった方の父母、祖父母などの上の世代を調べます。

上の世代がすべて死亡しているときは、横の世代である兄弟姉妹に範囲が拡がっていきます。そして、兄弟姉妹も亡くなっているときは、甥・姪が相続人となります。

今回のご依頼では、結果として、相続人が奥様のほかに、兄弟姉妹と甥・姪となり、合計で15名にもなりました。

全国に点在する相続人の調査をするのに2か月以上かかりました。

それからがもっとたいへんです。

ご依頼者である奥様から、夫の兄弟姉妹や甥・姪に連絡を取ろうとしても、夫の生前からほとんど面識はありません。

中には、葬儀に来られた方もありましたが、全員と日常的に交流をしているわけではありません。

相続人全員に、今回の相続の件の説明と、ご協力に応じていただけるように、手紙でご案内をしました。

しかし、反応があったのは半分ほどです。何度も手紙を送って、ようやくお返事がある方もあります。

中には、振り込め詐欺と勘違いされて、手紙をロクに読まずに捨ててしまう方や、電話でクレームを入れてこられる方もありました。

縁遠い親戚の相続の手続に、ほとんど知らない相手から、突然に協力してほしいと頼まれて、迷惑に感じる方も少なくありません。かかわりたくないとはっきり言われる方もありました。

では、どのようにすればよかったのでしょう。

夫が生前に遺言書を準備されていれば、このようなことになりませんでした。

遺言書がなかったことで、相続の手続が複雑になるほか、親戚一同に迷惑をかけることになってしまいました。

財産の多い少ないにとらわれることではなく、子どものいないご夫婦にとって、遺言書は必須です。

今回の事例では、たまたま兄弟姉妹や甥・姪と連絡がついたため、時間はかかったけれども、手続が完了しました。

しかし、相続人の中に、認知症で判断ができない方や、行方知れずで音信不通の方が含まれていた場合、相続の手続が止まったり、とても時間がかかってしまったりすることになります。

相続によって、凍結されてしまった夫の預金口座からは、現金を引き出すこともできず、これからの生活はどうなってしまうのでしょう。

大切なことなので、繰り返します。

おふたりさまは、遺言書を必ず準備しておいてください。

投稿者プロフィール

司法書士野田啓紀
司法書士野田啓紀
遺言書、家族信託、成年後見制度などを活用した相続対策、認知症対策を専門とする司法書士です。相続登記や遺産承継業務のような死亡後の相続の事務手続だけではなく、生前での相続や事業承継への対応に、適切な助言をいたします。

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