書籍

地面師

地面師とは、他人の土地を自分のもののように偽って第三者に売り渡す詐欺師のことと説明されます。

  • 土地を売買するのに、売主になりすました偽売主に、買主が売買代金を支払ってしまうと、買主は、土地の権利を手に入れることができません。売買代金だけを持ち逃げされてしまいます。
  • 土地を担保に借入をするのに、所有者になりすました偽所有者に、銀行が融資をしてしまうと、銀行は土地に担保を設定することができません。融資したお金だけを持ち逃げされてしまいます。

不動産関係者、金融機関のみならず、私ども司法書士にとっても、絶対に出会いたくもないし、巻き込まれたくないものであります。

おどろおどろしい表紙が目を引きますが、平成30年12月に刊行されました森功氏のノンフィクション『地面師』です。当初より話題となっておりましたが、ようやく読み進めることができました。

地面師の話題は、刑事ドラマなどでもときどき取り上げられており、細かいことが気になる悪い癖をお持ちの警部殿が、体を張って解決されていたこともありましたね。

積水ハウスやアパグループが、巨額の不動産詐欺の被害にあったことが報じられておりましたが、これらは、地面師グループによる犯行であったと言われております。

地面師の手口は、巧妙で、特定の組織の属しているものでもないため、全容がつかみにくいものです。その都度、専門の担当がリーダーのもとにグループをつくり、役割分担をして進められます。

関わった担当者の中でも、中継をしただけの者は、自分も被害者であると主張することが多く、関与した全員を詐欺罪等で立件することも困難であるとされています。

同書によりますと、地面師の犯行グループは、10名前後で構成されます。

反抗計画を立てるボスを頂点にし、なりすましの演技指導をする教育係やなりすまし役を見つけてくるのが手配師で、運転免許証やパスポートなどの本人確認書類を偽造するのが、印刷屋、工場、道具屋などと称されているようです。

また、振込口座を用意する銀行屋、口座屋のほか、弁護士や司法書士などの法律屋が登場します。

最近では、運転免許証やパスポートの偽造の技術が向上しており、見た目だけでは判別することが困難であります。そのうえ、これらは、インターネット等の手段で安価に販売されております。

率直に、役場の窓口での本人確認は、とても軽いため、出し抜くのは容易であります。偽造された本人確認書類を用いて、役場の窓口で実印を登録し直して、見事に他人の印鑑証明書を取得してしまうということが、よく使われる事例であります。ここで出来上がった印鑑証明書は、役場の専用紙に印刷された真正な印鑑証明書です。

不動産の安全な取引が実現されるために、仲介業者に加えて、私ども司法書士が関与しております。ただ単に登記の書類を作成して、代金決済に立ち会っているばかりではありません。

司法書士に対する評価として、代金決済のときにわずかな時間だけ同席したのみで、高額な報酬を持って帰ったというような誤った風説が流布されておりますが、代金決済の当日につつがなく手続きを進められるように、前もって入念に準備をしているからこそ、当日の手続きがわずかな時間で済むわけです。

なにしろ、不動産の売買は、一般の方にしてみれば、一生に一度のもっとも大きな買い物になることがほとんどであります。このような大切な取引の場を円滑に進め、確実に登記の手続きまで達成させるためにも、司法書士が事前の準備の中で、書類の点検や当事者の確認も含め、相当慎重になされております。

確実に登記がされ、名義が自分のものになる保証なくして、買主が売買代金を払うことはありえません。

ときどきですが、買主が登記を自分でしたいと要望されますが、万が一ミスをすれば、カネだけ払って、名義が自分のものにならないという特大のリスクを自己責任で納得できる方については、止めることはしません。しかし、通常はありえないと思います。

司法書士は、不動産の売買の当事者が、それぞれ本人で間違いがないかどうか、本人確認書類を点検したり、本人に直接質問をしたりすることで確認をします。ときには面倒に思われる方もいますが、これは、特に司法書士の趣味でやっているわけではありません。売主と買主の双方にとって重要な確認であるからです。

地面師は、どこに潜んでいるかわかりません。あなたが買おうとしているその土地は、本当に所有者である売主本人と契約をされましたか?

なりすましの相手ではないのか。取引の相手方の確認は、当事者が各々するべきことであります。

私ども司法書士は、不動産の安全な取引のため、その専門知識をいかして日々業務をしております。ぜひ、本人確認にもこころよく応じていただけますことをお願い申し上げます。

ABOUT ME
司法書士 野田啓紀
司法書士 野田啓紀
名古屋で相続、認知症対策専門の司法書士事務所を経営しています。人生100年時代を豊かに過ごせるように、老いの不安を解消し、想いに寄り添うコンサルティングに強みがあります。 遺言書、民事信託、成年後見制度などを組み合わせた相続、認知症対策のご提案をいたします。 当事務所では、相続登記や預貯金の解約のような死後の事務手続だけではなく、生前の相続、認知症、事業承継への対応に、適切な助言をいたしております。