クーリングオフとは,特定商取引に関する法律に定められたもので,申し込みや契約をした後でも,一方的に契約をやめることができる制度です。理由や条件を必要としない解除権で,強力な効果がある一方,これを利用できる場面が限られています。
クーリングオフは,書面によってします。また,この効果は,クーリングオフの書面を発信したときに発生します。
特定商取引とは
訪問販売
販売業者が営業所,代理店以外の場所において,契約の申込みを受け,または契約を締結して行う取引のことです。
また,いわゆるキャッチセールスやアポイントメントセールスのように,販売業者が,営業所等において,営業所等以外の場所において呼び止めて営業所等に同行させた者から契約の申込みを受け,または契約を締結して行う取引を含みます。
通信販売
販売業者が郵便やインターネット等により契約の申込みを受け,または契約を締結して行う取引のことであって,電話勧誘販売に該当しないものをいいます。
電話勧誘販売
販売業者が,電話をかけ又は政令で定める方法により電話をかけさせ,電話で勧誘行為を行い,契約の申込みを郵便等により受け,または契約の締結を郵便等により行う取引のことです。
政令で定める方法により電話をかけさせることとは,電話,郵便,メール等で当該契約の締結について勧誘をするためのものであることを告げずに電話をかけさせるほか,当選商法のような,他の人と比べて著しく有利な条件で契約を締結することができる旨を告げて,電話をかけさせることを言います。
連鎖販売取引
販売業者が,物品の再販売や受託販売をする者に対して,売れれば利益が得られるとして勧誘し,その者と入会金・会費等の負担を伴う商品の販売や役務提供の取引をすることです。いわゆるマルチ商法のことです。
ネットワークビジネスやMLM,サロンという名目で,マルチ商法とは異なるビジネスであると強調して,勧誘がされることがあります。
特定継続的役務提供
次に掲げる7つの業種のことです。
- エステティックサロン
- 美容整形,ホワイトニング歯科
- 語学教室
- 家庭教師
- 学習塾
- パソコン教室
- 結婚相手紹介サービス
業務提供誘引販売
販売業者が,報酬やモニター料が得られるからという理由で勧誘し,商品や役務を有償で販売することです。仕事を紹介するために特定の講座を受講するように勧誘する等,いわゆる内職商法のことです。
ホームページやブログで,アフィリエイトやドロップシッピング等の情報商材を利用して,勧誘がなされることがあります。
訪問購入
購入業者が営業所等以外の場所において,契約の申込みを受け,または契約を締結して行う物品の買い取りをすることです。家庭にある貴金属を査定する等の名目で訪問してきて,買い取りをさせるまで居座るような方法で,一般には,押し買いと言われています。
ただし,自動車,家具,書籍やCDの買い取りなど,一部については,この適用が除外されています。
ネガティブオプション
いわゆる送りつけ商法のことです。販売業者が申込みをしていない者に対して勝手に商品を送付した場合,その商品の送付があった日から起算して14日を経過する日までに,受け取った者が購入することに承諾をせず,かつ,販売業者がその商品の引取りをしないときは,その送付した商品の返還を請求することができない。
クーリングオフの効果
- 受け取った商品を返品できる
- 支払った代金を返してもらえる
- 工事をしたときは,業者が原状回復をする
- 利用したサービスの代金は支払う必要がない
- 返品,返金,原状回復等にかかる費用は,すべて業者が負担する
クーリングオフができる期間
クーリングオフの効果はとても強力であるため,利用できる取引内容と期間は,次のとおり限定されています。
取引内容 | 期間 | 適用対象 |
訪問販売 | 8日間 | すべての商品・役務,特定権利 |
電話勧誘販売 | 8日間 | すべての商品・役務,特定権利 |
連鎖販売取引 | 20日間 | すべての商品・役務・権利 |
特定継続的役務提供 | 8日間 | 指定7業種に限定 |
業務提供誘引販売 | 20日間 | すべての商品・役務・権利 |
訪問購入 | 8日間 | すべての物品 |
上記の表のうち,特定権利とは,次のものを指します。
- リゾート会員権等,保養のための施設またはスポーツ施設を利用する権利
- 映画,演劇,音楽,スポーツ,写真または絵画,彫刻その他の美術工芸品を鑑賞し,または観覧する権利
- 語学の教授を受ける権利
- 社債その他の金銭債権
- 株式会社の株式,合同会社の社員の持分,社団法人の社員権
クーリングオフができない場合
クーリングオフ期間内であっても,次のような取引については,クーリングオフができません。
- 営業のため,または営業目的で取引をしたとき
- 3000円未満の商品等を現金で購入したとき
- 自動車の購入,リース
- 電気,ガス,熱供給の役務提供
- 葬式
- 動物及び植物の加工品であって,人が摂取するもの(一般の食料品や医薬品を除く)
- 不織布及び幅が13センチメートル以上の織物
- コンドーム及び生理用品
- 防虫剤,殺虫剤,防臭剤及び脱臭剤
- 化粧品,毛髪用剤及び石けん,浴用剤,合成洗剤,洗浄剤,つや出し剤,ワックス,靴クリーム並びに歯ブラシ
- 履物
- 壁紙
- 配置薬
このほか,通信販売には,クーリングオフの制度はありません。ただし,解約・返品の特約を販売業者が定めていることがあり,この場合には,購入者の負担で契約を撤回し,購入した商品を返品することとなります。
クーリングオフ妨害があったとき
事業者が消費者に対して,クーリングオフについて不実のことを告げる行為をしたことにより当該告げられた内容が事実であるとの誤認をし,または購入業者が威迫したことにより困惑し,これらによってクーリングオフ期間内に申込みの撤回等を行わなかった場合は,事業者がクーリング・オフができる旨を記載した書面を交付し,説明したときから改めてクーリング・オフの期間が進行します。
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