裁判

無断駐車は罰金3万円をいただきます

路上駐車は、交通事故のもと。

かつて京都に住んでいた頃は、路上駐車の多いことに驚いたものです。ただでさえ市バスが渋滞を引き起こしているところに、狭い車道の左側車線が駐車場のようにされており、たいへん危険な道路状況でした。

それに比べますと、名古屋では、路上駐車はあまり見かけません。名古屋で多いのは、スピード違反と信号無視。黄色で止まると、後ろから追突されるような地域です。さすがは、永遠の交通死亡事故ワーストワンです。

路上駐車をするわけにもいかず、手近なところにコインパーキングがないこともあり、致し方なくコンビニやドラッグストアの駐車場を拝借することがあります。おすすめは、駐車スペースが広くて、トイレがとてもきれいなパチンコ店です。

さておき、そこの看板には、「無断駐車は罰金3万円をいただきます」なる警告文が看板に掲載されていることがあります。

「無断駐車は罰金3万円をいただきます」の効果

罰金というのは、刑事罰であり、裁判の手続きを経ることなく、個人間でこれを取り決めることはできません。ついては、罰金という記載ぶりは、意味がありません。

所有者の意図としては、違約金や損害賠償の予定ということになるのでしょう。

罰金にならないから、自由に駐車できるのか

意味がない記載ぶりであるからとはいえ、他人の土地に勝手に駐車をしてもよいことにはなりません。正当な理由がなければ、住居侵入や不退去の罪にもなりうると考えます。

他方で、他人の土地に勝手に駐車をすることは、不法行為として、所有者は損害賠償を請求することができます。刑事だけでなく、民事での責任を負います。この場合に請求できる金額は、具体的な損害額となります。

例えば、1時間駐車していたとして、近隣のコインパーキングの料金相場等を勘案して、せいぜい500~2000円程度になるものと予想します。3万円を請求したいのであれば、その根拠を示す必要があります。

損害賠償額の予定と考えることはできないのか

土地の所有者の目線に立ちますと、これを民法420条の損害賠償額の予定と考えることはできないのかという意見があります。これは、契約で損害賠償額をあらかじめ定めておくことにより、具体的な損害額を証明する必要がないという利点があります。

しかしながら、民法420条は、債務不履行における損害賠償額の予定であって、これを請求するには、土地の所有者と駐車した者の間で合意が成立していなければ請求できません。看板に一方的に表示をしていることのみをもって、合意が成立したと見ることは無理があるように思います。

また、不法行為に基づく損害賠償請求に関して、民法420条を準用する規定もないため、いずれにしても難しい主張となります。

したがって、勝手に駐車場を利用している人には、これを適用しにくいと考えられます。また、暴利な損害賠償の請求は、消費者契約法に基づいて、無効とされることがあります。

民法420条の改正点

2020年4月1日施行の改正民法では、民法420条について一部改正されております。

民法
(賠償額の予定)
第420条 当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。この場合において、裁判所は、その額を増減することができない。

2 賠償額の予定は,履行の請求又は解除権の行使を妨げない。

3 違約金は,賠償額の予定と推定する。

民法

改正民法では、下線部が削除されます。

これまでは、当事者間で予定した損害賠償の額を、裁判所が増減することができないとしておりましたが、一方で、あまりにも暴利である場合には、公序良俗違反や消費者契約法に基づいて、無効であると判断することがありました。

今般の改正によって、民法420条第1項後段が削除されましたが、この判断に対して障害となりうる部分を削除した意図であって、裁判所が増減できるようになったわけではないと説明されております。(潮見佳男『民法(債権関係)改正法の概要』金融財政事情研究会,75頁)

一般に、不動産の売買契約書には、損害賠償額が予定されており、これを売買代金の2割程度とされていることが多いように見受けます。

実際には、債務不履行の時点での損害額が、売買代金の2割に及ぶことは考えにくいため、これを暴利として無効や減額されることも考えられますが、この改正によって、裁判所が積極的に判断してくることがあるのでしょうか。

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司法書士 野田啓紀
司法書士 野田啓紀
名古屋で相続、認知症対策専門の司法書士事務所を経営しています。人生100年時代を豊かに過ごせるように、老いの不安を解消し、想いに寄り添うコンサルティングに強みがあります。 遺言書、民事信託、成年後見制度などを組み合わせた相続、認知症対策のご提案をいたします。 当事務所では、相続登記や預貯金の解約のような死後の事務手続だけではなく、生前の相続、認知症、事業承継への対応に、適切な助言をいたしております。