商業登記

取締役の増員

これまで、社長がおひとりで支えてこられた会社を、世代交代の準備をしながら、社長の椅子を後継者に譲るというご相談でした。

60代以上の経営者の方の半数以上が、まだ後継者が選定できていないという統計もあります。事業承継には、平均して5~10年かかると言われています。

その間に、社長が体調を崩して入院してしまったり、認知症になって判断能力が低下してしまったりしては、会社の存続すら危ういものになってしまいます。

早めに準備をされることを勧めております。

これまで、この会社には社長たる取締役Aが1名いたのみですから、Aがそのまま自動的に代表取締役となっていました。

今般、取締役を2名増員し、取締役はA、B、Cの3名となりました。そして、そのうち、Bを代表取締役に選定することと決めました。

ここまでの流れは、特に差し支えることはありませんが、これを登記しようとしたときに、少し引っかかるところがありました。

この会社では、取締役が1名のときはその者を代表取締役とし、取締役が2名以上いるときは取締役の互選により、そのうち1名を代表取締役とする旨の定款の定めがあります。

取締役が3名になったことで、そのうち1名を代表取締役に選び直すことになります。

登記すべき事項としては、取締役B就任、取締役C就任、代表取締役B就任となりますが、代表取締役Aの退任をどのように申請書に表現しようかと迷うところです。

この場合、代表取締役Aは、辞任するわけでもなく、解任されるわけでもありません。取締役を増員したときに、改めて代表取締役に選ばれなかっただけのことです。

すると、ふさわしい退任事由は「退任」くらいしかありません。消極的な判断ですが、他にふさわしいものがなく、それでよさそうです。

定められた手続そのものはたいしたことがないのですが、これを登記簿に記載することばに置き換えますと、悩ましいものがあります。

この事例、今までありそうで、経験のなかったものでした。経営の承継の方法としては決してめずらしいことではありませんので、備忘録としてここに残すことにします。

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司法書士 野田啓紀
司法書士 野田啓紀
名古屋で相続、認知症対策専門の司法書士事務所を経営しています。人生100年時代を豊かに過ごせるように、老いの不安を解消し、想いに寄り添うコンサルティングに強みがあります。 遺言書、民事信託、成年後見制度などを組み合わせた相続、認知症対策のご提案をいたします。 当事務所では、相続登記や預貯金の解約のような死後の事務手続だけではなく、生前の相続、認知症、事業承継への対応に、適切な助言をいたしております。