商業登記

株式の持ち合いと議決権行使

報道番組では、日産とルノーの話題で持ちきりであります。

有価証券報告書への虚偽記載にはじまり、ゴーン会長が取締役会で解職された等、金融商品取引法や会社法など、私の好きなところの話であり、少々首を突っ込みたくなりました。

会社法を学習するには良い材料となるものですが、マスコミが騒ぎますと、すぐに役員報酬の多寡などのくだらないところへスポットライトが当たってしまい、大切な論点がぼやけてしまいます。

株式の持ち合い

わが国では、安定株主の確保や取引先との関係強化のため、互いの会社の株式を持ち合うことが盛んにされてきました。

また、さまざまなアライアンスがありますが、資本提携をした場合には、出資を通じて相手方の会社の経営権に影響を及ぼすこともあります。

相互保有株式と議決権の制限

株式の相互保有とこれに伴う議決権の制限に関して、会社法に規定があります。

会社法
(議決権の数)
第308条 株主(株式会社がその総株主の議決権の4分の1以上を有することその他の事由を通じて株式会社がその経営を実質的に支配することが可能な関係にあるものとして法務省令で定める株主を除く。)は、株主総会において、その有する株式一株につき一個の議決権を有する。ただし、単元株式数を定款で定めている場合には、一単元の株式につき一個の議決権を有する。

2 前項の規定にかかわらず、株式会社は、自己株式については、議決権を有しない。

会社法

会社法施行規則
(実質的に支配することが可能となる関係)
第67条 法第308条第1項に規定する法務省令で定める株主は、株式会社(当該株式会社の子会社を含む。)が、当該株式会社の株主である会社等の議決権(同項その他これに準ずる法以外の法令(外国の法令を含む。)の規定により行使することができないとされる議決権を含み、役員等(会計監査人を除く。)の選任及び定款の変更に関する議案(これらの議案に相当するものを含む。)の全部につき株主総会(これに相当するものを含む。)において議決権を行使することができない株式(これに相当するものを含む。)に係る議決権を除く。以下この条において「相互保有対象議決権」という。)の総数の4分の1以上を有する場合における当該株主であるもの(当該株主であるもの以外の者が当該株式会社の株主総会の議案につき議決権を行使することができない場合(当該議案を決議する場合に限る。)における当該株主を除く。)とする。

2 前項の場合には、株式会社及びその子会社の有する相互保有対象議決権の数並びに相互保有対象議決権の総数(以下この条において「対象議決権数」という。)は、当該株式会社の株主総会の日における対象議決権数とする。
(以下、略)

会社法施行規則

株式の持ち合いをしている関係の間で、議決権総数の25%以上を保有されている会社は、保有している当該会社に対して議決権が行使できないということになります。

たいへん読みにくい規定ぶりであり、事例で説明しますと、R社は、N社の株式を43.4%保有しています。

N社は、R社の株式を15%保有しています。

この場合、N社は、R社の株主総会で議決権を行使できません。

R社の経営陣が、N社をコントロールして、R社の株主総会において経営陣に都合の良いように議決権を行使させることを防止することが目的であります。

ところが、N社が出資の割合を増やして、R社の株式を25%保有することになった場合には、N社がR社の株主総会で議決権を行使できないという結論は変わりませんが、加えて、R社もN社の株主総会で議決権を行使することができなくなります。

商業登記における相互保有株式の確認

司法書士試験の記述式問題においては、株主総会議事録、株主名簿や聴取記録から、議案ごとの決議が有効に成立しているか否かを読み取って、申請すべき登記事項を整理する能力が求められます。

実務においては、議決権に制限がかかるほどの相互保有がほとんどありませんので、あまり意識をしないところかもしれません。

しかし、商業登記の添付書類として株主リストを添付するようになり、会社の株主の状況を事前に確認することが増えました。これにより、株主に、個人ではなく会社が含まれている場合には、株式の持ち合いになっているかどうかを確認するようにしております。

特に、兄弟会社等のグループ会社間で持ち合いになっているときは、十分に気をつける必要があります。

決議が有効に成立していないものを登記してしまっては大問題であります。相互保有株式や自己株式の確認は、細かいところですが念入りにすることが望ましいと考えます。

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司法書士 野田啓紀
司法書士 野田啓紀
名古屋で相続、認知症対策専門の司法書士事務所を経営しています。人生100年時代を豊かに過ごせるように、老いの不安を解消し、想いに寄り添うコンサルティングに強みがあります。 遺言書、民事信託、成年後見制度などを組み合わせた相続、認知症対策のご提案をいたします。 当事務所では、相続登記や預貯金の解約のような死後の事務手続だけではなく、生前の相続、認知症、事業承継への対応に、適切な助言をいたしております。