会社の代表取締役である社長がお亡くなりになったときに、やらなければならない手続について考えてみます。
会社は、自然人とは異なり、寿命や病気で亡くなることはありませんが、社長が亡くなった場合には、社長個人の相続手続のほかに、会社の手続も急いでしなければなりません。
本来は、社長が元気なうちに、後継者を選ぶほか、会社の売却を検討したり、廃業を計画したり等、引退する準備を進めておくべきです。
それをしておかなければ、困るのは遺された家族です。
手続きに期限が決まっているもの
- 相続放棄
- 準確定申告
- 相続税の申告
相続放棄をする場合には、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所で手続をしなければなりません。
準確定申告は、亡くなった方が、その年の1月1日から死亡日までに収入があった場合に、亡くなった方の死亡を知ってから4か月以内に相続人全員で確定申告をして、納税をしなければなりません。
相続税の申告は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に提出し、納税をしなければなりません。
社長の死後、急いでするべきこと
葬儀を済ませたら、真っ先にするべきは、後任の代表取締役を選定することとなります。
社長が亡くなってから、いつまでも後任の社長を選ばずに放置すれば、取引先や金融機関に不安を与えてしまうほか、従業員にとっても会社の先行きが不透明に感じられるものです。
取引の変更や条件悪化、融資の停滞、従業員の離職等は、会社の存続にも影響します。
後任の代表取締役を選定し、法務局で代表取締役の変更の登記をしなければなりません。この登記手続は、確実で迅速さを求められますので、ぜひ司法書士にご依頼ください。
代表取締役の変更の届出
後任の代表取締役の選定し、法務局での変更登記の後で、引き続き、さまざまな届出や手続をする必要があります。
- 健康保険の会社の代表者の変更届
- 厚生年金の会社の代表者の変更届
- 金融機関の口座や保証人の変更手続
- 許認可が必要な事業をしている場合、代表者の変更届
建設業、運送業、古物商等の許認可が必要な事業をしている場合には、速やかに代表者の変更の手続きをしなければなりません。
ただし、後任の役員では、許認可を得られる要件を満たしていない場合には、その事業を続けることができなくなります。前もって、許認可の要件を満たすような人事を検討しておく必要があるでしょう。
株式の名義書換
中小企業では、代表取締役である社長が、会社の株式のほとんどを所有していることが多く見られます。
社長の死亡に伴い、自社株も相続財産となります。
相続人全員で遺産分割協議をして、これを誰が引き継ぐのかを決定し、名義の書き換えをすることとなります。
この際、経営の決定権を集中させるために、後任の社長に株式を相続させることをおすすめします。
しかし、会社の経営の状況によっては、自社株の価値が相当高くなっていることがあります。これにより、思わぬ金額の相続税を負担することもありますので、税理士に自社株の評価をしてもらい、適切に遺産分割協議ができるよう、助言を求めることが望ましいでしょう。
会社をたたみたい
社長の死亡をきっかけに、会社をたたんでしまいたいとお考えになる方もいます。
取引先等に会社を売却できる場合もあれば、やむなく廃業をすることもあります。
従業員の処遇や退職金の準備、取引先との調整、借入金・保証債務の整理等、やるべきことは多くあります。
会社が債務超過のまま清算手続に入ってしまうと、会社にとって負担が大きくなることがありますので、前もって準備をしなければなりません。
在庫処分、廃棄物の処理、借地やテナントの原状回復工事、土壌調査など、多くの費用が必要となるほか、会社の借入金の返済のために、役員が個人の財布から立て替え払いをしなければならない場合もありますので、現金を確保しておくことが重要です。
会社を廃業するにも、多額の出費が予定されます。数年間かけて、計画的に進めましょう。
2代目、3代目としてがんばりたい
会社を継続することには苦労もありますが、従業員や地域社会のためにも、がんばって継続していくことにも意義があります。
代替わりをきっかけに、売上を伸ばしたい、財務改善をして有利な条件で融資を受けたい、会社の事業を支援してくれる業者を紹介してほしい、補助金や助成金を受けたいなどのご要望があれば、司法書士野田啓紀事務所では、経営に関するコンサルティング業務にも対応しているほか、信頼できるパートナーを多く揃えております。ぜひ、ご相談いただければと思います。