平成30年11月15日に、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法の一部が施行されます。
この特別措置法は、社会経済情勢の変化に伴い所有者不明土地が増加していることに鑑み、所有者不明土地の利用の円滑化及び土地の所有者の効果的な探索を図るため、国土交通大臣及び法務大臣による基本方針の策定について定めるとともに、地域福利増進事業の実施のための措置、所有者不明土地の収用又は使用に関する土地収用法の特例、土地の所有者等に関する情報の利用及び提供その他の特別の措置を講じ、もって国土の適正かつ合理的な利用に寄与することを目的とする。とあります。
国土交通大臣と法務大臣が基本方針を定め、国と地方公共団体がこれを実施するという立て付けになっております。
所有者不明土地問題研究会の報告によれば、今や九州の面積より広い410万ヘクタールの土地が所有者不明の状態であります。
これが公共事業のための用地収容の障害となったり、森林や農地が荒れ放題になったりする理由となるほか、大規模災害が発生した際には、土地の所有者がわからないことが復旧・復興の大きな妨げになることが社会問題化しております。
言葉の定義
所有者不明土地
相当な努力が払われたと認められるものとして政令で定める方法により探索を行ってもなおその所有者の全部又は一部を確知することができない一筆の土地をいう。
特定所有者不明土地
所有者不明土地のうち、現に建築物が存せず、かつ、業務の用その他の特別の用途に供されていない土地をいう。
地域福利増進事業
次に掲げる事業であって、地域住民その他の者の共同の福祉または利便の増進を図るために行われるものをいう。
- 道路、路外駐車場その他一般交通の用に供する施設の整備に関する事業
- 学校またはこれに準ずるその他の教育のための施設の整備に関する事業
- 公民館または図書館の整備に関する事業
- 社会福祉事業の用に供する施設の整備に関する事業
- 病院、療養所、診療所または助産所の整備に関する事業
- 公園、緑地、広場または運動場の整備に関する事業
- 被災者の住宅の整備に関する事業であって、災害救助法が適用された市町村の区域内において行われるもの
- 地域住民のための購買施設、教養文化施設に関する事業であって、被災地域や過疎地において行われるもの
- 各事業のために欠くことができない通路、材料置場その他の施設の整備に関する事業
特定登記未了土地
所有権の登記名義人の死亡後に相続登記等がされていない土地であって、土地収用法第3条各号に掲げるものに関する事業を実施しようとする区域の適切な選定その他の公共の利益となる事業の円滑な遂行を図るため当該土地の所有権の登記名義人となり得る者を探索する必要があるものをいう。
この法律でできるようになること
- 国または地方公共団体の長が、家庭裁判所に対して不在者財産管理人や相続財産管理人の選任の請求をすることができる
- 都道府県知事及び市町村長は、地域福利増進事業等の実施のためであれば、土地所有者等の個人情報を利用したり、事業者に対してこれを提供することができる
- 法務局は、長年にわたって相続登記等がされていない土地について、相続人を探索した上、長期間にわたり相続登記等がされていない土地である旨を登記簿に付記することができる。
- 法務局は、相続人の探索により当該土地の相続人となり得る者を知ったときは、その者に対し、相続登記等の申請を勧告することができる
- 法務局が、関係地方公共団体の長その他の者に対し、戸籍等の土地所有者の相続関係に関する情報提供を求めることができる
所有者不明土地の問題は、時が経つほどに解決が難しくなります。
所有者個人の責任に任せておいた結果が、現在の状況であるならば、国が介在することはやむを得ないのではないかと考えます。
相続登記は後回しにせず、お早めに。