法改正

児童虐待には親権の制限を

小さな子どもが、親に無惨に殺されたということが、連日報道されております。

児童相談所が対応している虐待の相談件数は、年間12万件を超えているそうです。

子どもの助けを求める声がたどり着くべきところに届かず、学校や児童相談所の対応の良し悪しに延焼し、被疑者の手口が次々と明かされていっております。なんともテレビ向けの話題ですね。

こういう事件がコンテンツ化し、お茶の間で野次馬を増やすような報道のあり方には、疑問に思うところがあります。まず、事件を事細かく報じる必要はないでしょう。また、同様の被害を、今後生み出さないようにするにはどのようなあり方が考えられるのかという部分について、考えなければなりません。

勧善懲悪の善悪二元論に仕立てて見せたほうが、わかりやすく視聴者受けがいいのでしょうが、あまりにも安直な報道姿勢であると言わざるを得ません。

個人情報保護の行き過ぎを見直し、学校や児童相談所等で把握している情報を、警察も含めて関係者間で共有することも必要でしょう。地域のコミュニティが希薄になっていることも理由ではないでしょうか。

また、現場で対応している職員の負担が大きいように思います。

学校や児相の職員をサンドバックにして視聴者の鬱憤を晴らすことも、この問題を本質的な解決から遠ざけてしまうものです。

北九州監禁事件の松永死刑囚のように、言葉巧みに相手を思い通りに行動させてしまうタイプの犯罪者もいます。今回の被疑者がそれに相当するのかはわかりませんが、素人が安易に面談をしてはならない相手がいるということを前提にした再発防止策が必要と考えます。

学校や児童相談所であっても、乱暴狼藉をはたらく者があれば、警察に通報すればいいのです。これを組織内のパワーバランスの中で日和見に徹すれば、取り返しのつかない状況になることは、この事件がはじめてではありません。

少なくとも教育の現場では、性善説的なものの考え方を捨てることも検討する時期に来ているのではないでしょうか。

さて、児童虐待を法律を使って救済する方法についても検討してみましょう。

親権の制限

(親権喪失の審判)
第834条 父又は母による虐待又は悪意の遺棄があるときその他父又は母による親権の行使が著しく困難又は不適当であることにより子の利益を著しく害するときは、家庭裁判所は、子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官の請求により、その父又は母について、親権喪失の審判をすることができる。ただし、二年以内にその原因が消滅する見込みがあるときは、この限りでない。

(親権停止の審判)
第834条の2 父又は母による親権の行使が困難又は不適当であることにより子の利益を害するときは、家庭裁判所は、子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官の請求により、その父又は母について、親権停止の審判をすることができる。

2 家庭裁判所は、親権停止の審判をするときは、その原因が消滅するまでに要すると見込まれる期間、子の心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮して、二年を超えない範囲内で、親権を停止する期間を定める。

(管理権喪失の審判)
第835条 父又は母による管理権の行使が困難又は不適当であることにより子の利益を害するときは、家庭裁判所は、子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官の請求により、その父又は母について、管理権喪失の審判をすることができる。

民法

父母の虐待や悪意の遺棄があったことにより、子の利益を著しく害するときは、家庭裁判所に申立てをして、完全に親権を奪い取るか、2年以内の一定期間、親権を停止させることができます。

これにより、子どもを虐待する親から引き離して、児童相談所に入所させるほか、親戚に保護してもらうこととなります。親権を行使するものがいない間は、一時的に児童相談所長が親権を行使することができます。これに加えて、未成年後見人を選任することができます。

親権の喪失または停止を申し立てることができる者は、子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人のほか、児童相談所長(児童福祉法第33条の7)です。

親権停止の申立件数は、増加傾向にあり、年間で200件以上になります。このうち、児童相談所長からの申立件数も大きく伸長しております。

特別養子縁組

(特別養子縁組の成立)
第817条の2 家庭裁判所は、次条から第817条の7までに定める要件があるときは、養親となる者の請求により、実方の血族との親族関係が終了する縁組(以下この款において「特別養子縁組」という。)を成立させることができる。

2 前項に規定する請求をするには、第794条又は第798条の許可を得ることを要しない。

(養子となる者の年齢)
第817条の5 第817条の2に規定する請求の時に6歳に達している者は、養子となることができない。ただし、その者が8歳未満であって6歳に達する前から引き続き養親となる者に監護されている場合は、この限りでない。

(父母の同意)
第817条の6 特別養子縁組の成立には、養子となる者の父母の同意がなければならない。ただし、父母がその意思を表示することができない場合又は父母による虐待、悪意の遺棄その他養子となる者の利益を著しく害する事由がある場合は、この限りでない。

(子の利益のための特別の必要性)
第817条の7 特別養子縁組は、父母による養子となる者の監護が著しく困難又は不適当であることその他特別の事情がある場合において、子の利益のため特に必要があると認めるときに、これを成立させるものとする。

(実方との親族関係の終了)
第817条の9 養子と実方の父母及びその血族との親族関係は、特別養子縁組によって終了する。ただし、第817条の3第2項ただし書に規定する他の一方及びその血族との親族関係については、この限りでない。

民法

特別養子縁組をすることにより、実父母との血縁関係を完全に断ち切ることができます。現在は、年間で500件ほどの利用があります。

虐待等で子の利益を著しく害する場合には、実父母の同意なく、養子縁組を成立させることもできます。

ただし、年齢制限があり、子の年齢が6歳未満でなければできません。ただし、6歳になる前から養親になる者に監護されていた場合は、8歳未満までに延長することが認められます。

特別養子縁組の制度をより利用しやすくして、子の福祉の増進をはかるため、年齢制限を15歳未満へ引き上げることのほか、児童相談所長からの申し立てを可能にすること等が法制審議会で検討されています。

匿名での通報や相談もできます

児童虐待

ダイヤル189では、匿名での通報もできるようです。

異常な声がする、最近姿を見かけない、不潔な格好をさせられている等、予兆はあるものです。そのようなことをする親ですから、なんとなく察しても関わり合いになりたくない気持ちも理解できますが、もう少し社会で支えることも必要ですね。

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司法書士 野田啓紀
司法書士 野田啓紀
名古屋で相続、認知症対策専門の司法書士事務所を経営しています。人生100年時代を豊かに過ごせるように、老いの不安を解消し、想いに寄り添うコンサルティングに強みがあります。 遺言書、民事信託、成年後見制度などを組み合わせた相続、認知症対策のご提案をいたします。 当事務所では、相続登記や預貯金の解約のような死後の事務手続だけではなく、生前の相続、認知症、事業承継への対応に、適切な助言をいたしております。