司法書士の報酬は、かつては報酬基準によって、手続ごとに一律に定められておりましたが、現在は、各事務所の方針にしたがって、自由に決めることができます。
同じ手続であっても、高いところもあれば安いところもあります。登記手続は、どの司法書士がやっても、完成品たる登記簿には大差がないため、誰がやっても同じと揶揄されることもあります。
そのせいで、無謀な価格競争をしているところもありますね。
個人的には、報酬の相場にこだわるつもりはありませんし、相見積もりを頼まれれば、面倒なので、わざと高い価格を示して譲ってしまうことも多いです。値札ではなく、司法書士の野田啓紀を選んでくださる方を歓迎しております。
利用者にとっては、支払う報酬は安い方を好まれる方もありますが、とはいえ、私ども司法書士もプロとして仕事をしていますから、そこに付いている値段には理由があるのです。正直、他の事務所がいくらでやっているかなど、興味もありません。
司法書士は、できる業務範囲に制限があります。全部おまかせで、というつもりで依頼をされても、できないことがあります。
安くする分だけ、ご依頼者本人に動いていただくこともありえます。
司法書士にご依頼いただく手続に関して、報酬の額面だけではなく、内容の部分までしっかり確認をされることをおすすめします。
薄利多売
不動産業者や住宅メーカーと提携して仕事をされている司法書士事務所にありがちですが、請け負っている仕事の量が多く、一件あたりの報酬を低めに設定されていることがあります。
二束三文の案件がバルクで回ってくることもあるようです。
物上げ業者の司法書士報酬ちゅうのは
仕入れ5000円、売却3万とかのレベルになりますんで儲からない
しかしながら、この金額でもやっている司法書士がいるんですよ— 司法くん (@m_rqml7) May 11, 2020
確かに、お値打ちな価格が示されていますが、落とし穴があります。
このような事務所では、提携先からの仕事を最優先に取り掛かるため、一見のお客様は後回しにされ、頼んだ仕事が、いつまでたっても終わらないことがあります。
また、提携先からの定型的な業務を大量に捌くような業務フローを構築しているため、そこからはずれる一般の案件やイレギュラーな案件には慣れていないことがあります。
抱き合わせ販売
会社の設立手続の場面でよく見かけます。
ついに設立登記の実費負担が0円になるサービスが登場する時代のようです…
他の一定の商品・サービスを導入することが、実費負担が0円になる条件のようです。設立登記の実費負担が0円になるサービス『0円創業くん』をリリース~創業準備から会社設立代行まで一括サポート~ https://t.co/1w65e9BKns
— みつき / 元公庫職員VTuber (@mitsuki1141) May 8, 2020
顧問契約のような継続的な取引を条件として、ほとんどタダのような報酬で、会社の設立手続を請け負っている方がいます。
また、自社製品の契約と引き換えに、登記費用を異常に低廉な価格で提示していることもあります。フリーミアムな発想でもあります。
その手続は確かに低い報酬で依頼ができるかもしれませんが、抱き合わせでついてくるものが、本当に必要なものなのかは、しっかり見極めてください。
また、司法書士の資格を持たない業者が宣伝や勧誘に関与していることも見られ、ご依頼された手続について、責任ある対応が期待できないこともありますので、ご注意ください。
他の分野に稼ぎ口がある
他の仕事との兼業の司法書士もいます。
他に本業がある方で、半ば道楽で司法書士をやっている方ですと、報酬が安めに設定されていることがあります。
ただし、本気で司法書士業務をやっていない可能性があり、最新の法令実務にアップデートされていなかったり、こまめな対応が期待できないことがあります。
このような方は、あまり宣伝をされているわけでもありませんので、出会うのはなかなか難しいでしょう。
未経験者・未経験業務
これが一番の地雷です。
司法書士の業務は、多岐にわたります。やったことのない未知の手続であるため、どのくらいの業務量になるのか想像できず、異常に安い価格をつけていることがあります。
報酬の額だけを見て司法書士を選んだものの、希望する期間内に仕事が終わらなかったり、段取りができなかったりします。
手続の仕上げである登記申請は、どの司法書士でもできますが、途中の段階で、相談に応じたり、必要に応じて助言をしたりするところまでがサービスですから、このあたりは報酬の金額に応じて、随分と差が出てくるところになります。
とにかく、安いには、ワケがあるものです。
カステラの切れっ端、破れた明太子、脚のちぎれた蟹なら、喜んで買いますけどね。
大切な登記手続ですから、ご依頼する先は慎重に選びたいものです。